転職の面接で、ほぼ必ず聞かれるのが志望動機です。この記事では、面接官が志望動機で何を確かめているのかを押さえたうえで、基本の3要素、作り方の4ステップ、状況別の例文、評価が下がるNG例を紹介します。最後に、選考を通過するだけでは見えにくい「志望動機の死角」も説明します。
1. 面接官が志望動機で確かめていること
1-1. 入社後に定着するか
中途採用の面接では、主に「即戦力になるか」と「入社後に定着するか」の2点が見られています。
志望動機は、このうち「定着するか」を確かめるための質問です。熱意の強さを測っているのではなく、次のような点を見ています。
- 転職理由と志望動機がつながっているか
- 入社後にやりたいことと、会社が任せたい仕事が一致しているか
- 前の職場と同じ理由で、またすぐ辞めないか
つまり「御社でなければならない理由」を熱く語るよりも、「この会社なら前の不満が解消され、続けたいことも続けられる」と筋道立てて説明できるほうが評価されます。
1-2. 「この人を推して大丈夫か」という面接官の事情
面接官も、採用の結果を問われる立場にいます。自分が通した人がすぐに辞めたり、期待どおりに働けなかったりすれば、その判断が社内で問われます。
そのため面接官は、「この人を推薦しても大丈夫か」という目線でも話を聞いています。志望動機が曖昧だったり、退職理由とつながっていなかったりすると、能力があっても「通すのが怖い人」に見えてしまいます。
逆に言えば、志望動機の筋が通っていれば、面接官は次の面接官や上司に「この人はこういう理由で合うと思います」と説明しやすくなります。志望動機は、面接官が社内であなたを推すための材料でもあります。
2. 志望動機の基本構成(3要素)
転職の志望動機は、次の3つの要素で組み立てます。
| 要素 | 伝えること | 面接官が確かめたいこと |
|---|---|---|
| ①なぜこの会社か | 応募先のどこに惹かれたのか、その根拠 | 他社でもいいのではないか |
| ②活かせる経験 | これまでの仕事で身につけたことのうち、応募先で使えるもの | 入社後に活躍できるか |
| ③入社後の貢献 | 経験を活かして、どんな仕事で成果を出したいか | 任せたい仕事と本人のやりたいことが一致しているか |
この3つは、順番につながっていることが大切です。
①この会社の〇〇に惹かれた → ②自分には△△の経験がある → ③だから入社後は〇〇の領域で△△を活かして貢献したい
どれか1つが抜けると、次のように見えてしまいます。
- ①がない:経験の説明だけになり、「なぜうちなのか」が伝わらない
- ②がない:憧れだけに見え、即戦力として期待できない
- ③がない:入社後の姿が見えず、ミスマッチの不安が残る
1章で触れたとおり、面接官は「入社後に定着するか」を見ています。3要素がつながっていると、「この人はこういう理由で、うちのこの仕事に合う」と面接官自身が説明できるようになります。
3. 志望動機の作り方4ステップ
3-1. 経験を棚卸しする
まず、これまでの仕事を書き出します。「何を担当し、どう進め、どんな結果が出たか」をセットで書くと、志望動機の「活かせる経験」の材料になります。
ここで注意したいのは、社内の言葉のまま書かないことです。部署名や社内用語は社外の人には伝わりません。社内表彰や肩書きのような社内での評価も、それだけでは何ができる人なのかが伝わらないため、評価の理由になった仕事や成果に置き換えます。
| 社内の言葉 | 社外に伝わる書き方 | 変換のしかた |
|---|---|---|
| 〇〇推進室で△△プロジェクトを担当 | 営業部門と開発部門の間に立ち、新サービスの立ち上げを担当 | 部署名・プロジェクト名を、役割と仕事の中身に言い換える |
| 社内表彰を受賞 | 担当サービスの売上を前年比120%に伸ばし、社内表彰を受賞 | 表彰の理由になった成果を主役にする |
| リーダーを務めた | 5名のチームで、進捗管理とメンバーの育成を担当 | 肩書きを、人数と担当した仕事に言い換える |
社内では当たり前に使っている言葉ほど、変換が必要だと気づきにくいので、書き出した後に「この会社を知らない人が読んでわかるか」を確認しましょう。
3-2. 応募先を調べる
次に、応募先について調べ、「なぜこの会社か」の根拠を集めます。
- 事業内容と、今後力を入れようとしている領域
- 募集しているポジションで任される仕事
- 求める人物像・必要な経験
求人票、企業サイト、採用ページ、社員インタビューなどが主な情報源です。
志望動機の根拠として使うのは、こうした公開情報で構いません。ただ、それが本当に入社後の実態と合っているかは、選考の中で確かめる必要があります。確かめ方は6-2で説明します。
3-3. 3要素に組み立てる
3-1と3-2で集めた材料を、2章の3要素に当てはめます。
- なぜこの会社か:3-2で見つけた、応募先ならではの特徴
- 活かせる経験:3-1の経験のうち、応募先の仕事に直接つながるもの
- 入社後の貢献:2の経験を使って、応募先のどの仕事で成果を出したいか
最初に結論(なぜこの会社を志望するのか)を1文で述べ、その後に経験と貢献を続けると、話の筋が伝わりやすくなります。
組み立てたら、退職理由と矛盾していないかも確認します。たとえば退職理由で「もっと裁量を持ちたい」と言っているのに、志望動機で「安定した環境で働きたい」と言うと、面接官はどちらが本音なのか判断できません。
3-4. 書類は200〜300字、面接は1〜2分にまとめる
長さの目安は次のとおりです。
| 場面 | 目安 |
|---|---|
| 履歴書・職務経歴書 | 200〜300字程度 |
| 面接(指定がない場合) | 1〜2分程度(250〜600字ほど) |
人が1分間に話せるのは250〜300字程度です。面接用は一度書き出し、声に出して読んで時間を測っておくと安心です。
書類と面接で内容を大きく変える必要はありません。書類では要点を絞り、面接では書類に書いた内容をエピソードで補います。面接で書類にないエピソードを足すのは問題ありませんが、書類と違う理由を話すと、どちらが本音なのか疑われます。
4. 状況別の例文
ここからは、よくある4つの状況別に例文を紹介します。どれも200〜300字程度で、2章の3要素(①なぜこの会社か/②活かせる経験/③入社後の貢献)に沿って書いています。
例文は型を確認するためのものです。そのまま使うと、同じ例文を参考にした他の応募者と似た内容になります。①と③は必ず応募先に合わせて、②は自分の経験で書き直してください。
4-1. 同職種でキャリアアップしたい
想定:法人営業(5年目、後輩の指導も担当)→ 営業チームのリーダー候補へ
貴社を志望したのは、営業チームを拡大していく段階にあり、メンバーの育成と成果の両方に責任を持つ役割に挑戦できる点に魅力を感じたためです。(①)現職では法人営業を5年担当し、直近2年は後輩3名の指導も任されてきました。商談の進め方を一緒に振り返る時間を週1回設けた結果、3名とも1年目で目標を達成しています。(②)入社後は、後輩の育成で得た経験を活かし、メンバー一人ひとりの成果を伸ばすことで、チーム全体の目標達成に貢献したいと考えています。(③)
ポイント
- 「マネジメントしたい」だけでなく、すでに指導を任されてきた経験を根拠にしている
- ①の「育成と成果の両方に責任を持つ役割」に、②の「後輩を育てて成果を出した経験」が直接つながっている
4-2. 異業種・未経験の職種に挑戦したい
想定:小売店の店長(5年)→ Webマーケティング職へ
貴社を志望したのは、店舗とECの両方を持つ事業の中で、データをもとに集客施策を考えるマーケティングに携われる点に惹かれたためです。(①)現職では店長として5年間、売上データと来店客の動きを見ながら、売り場の配置や販促の時期を変える改善を続けてきました。その結果、担当店舗の客単価を1年で8%上げることができました。(②)入社後は、店舗での顧客理解を活かし、店舗とECをつなぐ施策で売上に貢献したいと考えています。(③)
ポイント
- 未経験でも「職種は違うが、やっていたことは近い」経験を選んでいる
- 応募先を選んだ理由に、前職の経験が活きる特徴(店舗とECの両方がある)を入れている
- 「学びたい」ではなく「経験を活かして貢献したい」で締めている
4-3. 仕事の関わり方を変えたい
想定:会計事務所で顧客企業の経理を代行(3年)→ 事業会社の経理へ
貴社を志望したのは、経理部門が月次の数字を経営判断に使える形にまとめ、事業部と一緒に改善を進めている点に魅力を感じたためです。(①)現職では会計事務所で、15社の記帳と月次決算の代行を担当してきました。限られた期間で複数社の決算をまとめるため、作業手順を整理して、締め作業を1社あたり2日短縮しました。(②)入社後は、正確さと速さを両立させてきた経験を活かし、月次の数字をいち早く経営判断に届けることで、事業部の改善に貢献したいと考えています。(③)
ポイント
- 同じ職種のまま、仕事の関わり方(数字を締める側から、数字を経営に活かす側へ)を変える理由として書いている
- 残業や休日などの条件面の希望があっても、志望動機の中心には置かない(理由は5-1と6-2で説明します)
4-4. 専門性を深めたい
想定:受託開発のWebエンジニア(4年)→ 自社サービスのバックエンドエンジニアへ
貴社を志望したのは、自社サービスの利用者が急増する中で、大量のアクセスに耐えられる仕組みづくりに取り組んでいる点に惹かれたためです。(①)現職では受託開発のエンジニアとして4年間、複数のWebサービスのバックエンド開発を担当してきました。直近の案件では、処理の遅いSQLクエリを見直し、画面の表示時間を半分に短縮しました。(②)入社後は、性能改善の経験を活かし、サービスの成長に合わせて仕組みを改善し続ける仕事で貢献したいと考えています。(③)
ポイント
- 「深めたい専門性」が、応募先が今まさに取り組んでいる課題と一致している
- 技術職なので一般的な技術用語は使ってよいが、成果は「表示時間を半分に」のように誰にでもわかる形で伝えている(一次面接は人事が担当することも多いため)
5. 評価が下がるNG例
志望動機でよくある失敗は、次の4つです。どれも「入社後に定着するか」「活躍できるか」に不安を残してしまうパターンです。
5-1. 条件面だけを理由にする
NG:「貴社はリモートワークが可能で、年間休日も多いため志望しました。」
働きやすさは大切な判断材料ですが、志望動機の中心に置くと、面接官には「条件がもっと良い会社があれば、そちらに移る人」に見えます。仕事の内容に触れていないので、入社後に何をしたいのかも伝わりません。
改善の方向:条件面ではなく、仕事の内容や応募先の事業を理由の中心に置く。条件面の希望は、志望動機とは別の場で確かめます(6-2で説明します)。
5-2. どの会社にも言える
NG:「貴社の『挑戦を歓迎する社風』に共感し、志望しました。」
「社風に共感」「理念に共感」「成長している業界だから」といった理由は、多くの会社に当てはまります。面接官からは「うちでなくてもいいのでは」と思われ、ほかの応募企業にも同じ内容を出していると受け取られやすくなります。
改善の方向:社風や理念を挙げるなら、それが表れている具体的な事業や仕事の進め方と、自分の経験がどうつながるかまで書く。
5-3. 退職理由と矛盾する
NG:退職理由「一つの業務を長く担当し、変化が少ないため」 志望動機「安定した基盤のある貴社で、腰を据えて働きたいと考えました」
退職理由と志望動機が逆を向いていると、面接官はどちらが本音なのか判断できません。「前の会社でも同じ理由で不満を持ち、また辞めるのでは」という不安にもつながります。
改善の方向:書き終えたら、退職理由と並べて読み、「前の職場で叶わなかったことが、応募先なら叶う」という流れになっているかを確認する。ただし、この流れだけで応募先を選ぶと別の失敗につながることがあります(6-3で説明します)。
5-4. 「学びたい」が中心の受け身な内容
NG:「貴社の充実した研修制度のもとで、マーケティングの知識を学びたいと考えています。」
中途採用は、経験を活かして成果を出してもらうための採用です。「学びたい」が中心だと、会社に何をもたらしてくれるのかが見えません。未経験の職種に応募する場合でも同じです。
改善の方向:学ぶ意欲は1文にとどめ、「これまでの経験のうち、何を活かして貢献できるか」を中心に書く(4-2の例文を参考にしてください)。
6. 志望動機の死角
ここまでは、選考を通過するための志望動機の作り方です。ただ、通過しやすい志望動機が、入社後もうまくいく志望動機とは限りません。最後に、見落とされがちな3つの点を説明します。
6-1. よく見せるほど、入社後に高すぎる期待を背負う
志望動機で経験を大きく見せるほど、選考は通りやすくなります。ただ、面接官はその内容をもとに「この人にはこの仕事を任せられる」と判断しています。
実力以上に見せて入社すると、入社直後から期待値の高い役割を任され、成果が出るまで苦しい時期が続きます。中途入社者への「即戦力」の期待には、選考での見せ方によって作られている部分もあるのです。
志望動機で書く経験は、入社後に再現できる範囲にとどめましょう。また、入社後の最初の1〜2ヶ月で、上司と「何をいつまでに期待されているか」をすり合わせておくと、期待値が実態とずれたまま固まるのを防げます。
選考対策の助言は、どうしても「通過すること」をゴールにしがちです。内定率が下がる方向の助言はしにくいため、「盛りすぎないほうがいい」と言ってくれる人は多くありません。
6-2. 条件面の本音は、書かなくても確かめる必要がある
5-1で、条件面を志望動機の中心に置くのはNGだと説明しました。ただ、それは「条件面の希望を捨てる」という意味ではありません。
残業時間、リモートワーク、休日など、譲れない条件があるなら、書かずに選考を進めても、その希望は消えません。確かめないまま入社すれば、前の職場と同じ不満を抱えることになります。
確かめるタイミングは、次のとおりです。
| タイミング | 確かめること |
|---|---|
| 面接の逆質問 | 配属先の仕事の進め方、チームの体制など(条件面ではなく仕事の内容として聞く) |
| 現場の社員との面談 | 実際の働き方、1日の流れ(選考に組み込まれていなければ、自分から依頼する) |
| 内定後のオファー面談 | 給与、残業、休日、リモートワークなどの条件(労働条件通知書と照らし合わせる) |
面接で会うのは、多くの場合人事や役員です。入社後に毎日一緒に働く上司やチームの話は、頼まなければ聞けないことがほとんどです。
選考中(逆質問・現場の社員との面談)に、残業時間やリモートワークの頻度を直接聞くと、「条件ばかり気にする人」という印象を与えるおそれがあります。仕事の進め方を聞く形にすると、働き方を間接的に把握できます。
| 知りたいこと | 直接聞く(選考中は避ける) | 仕事の進め方として聞く |
|---|---|---|
| 残業時間 | 「残業は月何時間くらいですか?」 | 「チームの1日の流れを教えていただけますか?」「繁忙期はいつ頃で、その時期はチームでどう回していますか?」 |
| リモートワーク | 「リモートは週何日できますか?」 | 「チームの打ち合わせは、オンラインと対面のどちらが多いですか?」 |
| 休日・休暇 | 「有給は取りやすいですか?」 | 「メンバーが休むときは、仕事の引き継ぎをどうしていますか?」 |
具体的な数字(給与・残業時間・休日数など)は、内定後のオファー面談で直接確かめて構いません。この段階では条件の確認は当然のことなので、遠慮せずに聞きましょう。
条件面の聞き方は、面接の退職理由:本音別の伝え方と例文でも詳しく説明しています。
6-3. 退職理由の裏返しだけで作ると、別の不満を引く
5-3では、退職理由と志望動機が「前の職場で叶わなかったことが、応募先なら叶う」という流れになっているかを確認しました。これは選考を通過するには有効ですが、それだけで応募先を選ぶと落とし穴があります。
「裁量がない」から「裁量のある会社」へ、「評価されない」から「評価制度が整った会社」へ。退職理由を裏返して志望動機を作ると、筋が通って見えます。
ただ、不満が高まっている時期に考える転職の軸は、直前の嫌なことの裏返しになりやすいものです。その1点だけを基準に会社を選ぶと、その不満は解消されても、前の職場では問題なかった別の部分で不満が出ることがあります。
志望動機を作る前に、退職理由だけでなく「今の仕事で続けたいこと」「前の職場で良かったこと」も書き出しておきましょう。それが応募先でも守られるかを確かめておくと、同じような失敗を防げます。
7. よくある質問
Q. 本当の動機が「年収」のときは?
年収を上げたいという動機自体は、まったく問題ありません。ただ、志望動機として「年収が高いから」と書くと、5-1と同じく「もっと条件の良い会社があれば移る人」に見えてしまいます。
年収が上がる背景には、たいてい「より大きな役割を任される」「専門性が評価される」といった仕事の変化があります。志望動機では、その仕事の変化のほうを理由として書きましょう。
年収の希望そのものは、内定後のオファー面談で確かめます(6-2参照)。
Q. 複数社に同じ志望動機を使っていい?
一部は使い回して構いません。3要素のうち、②の「活かせる経験」は自分の経歴なので、どの会社に出しても大きくは変わりません。
一方、①の「なぜこの会社か」と③の「入社後の貢献」は、会社ごとに必ず書き分けてください。ここが同じだと、5-2の「どの会社にも言える」志望動機になります。
応募社数が多く、1社ずつ作り込む時間がない場合は、転職エージェントに添削を頼むのも1つの方法です。面談で何を話せばいいかは、転職エージェントの面談:聞かれること一覧と答え方で説明しています。